今年3月に、初の著書『純ジャパの僕が10ヶ国語を話せた 世界一シンプルな外国語勉強法』を出版された秋山燿平さん。前編に引き続き、同書や言語学習、そして人生観について、お話を伺っていきます。

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ーー秋山さんは、ネルソンマンデラの「あなたが彼の理解する言葉で話したら、それは彼の頭に行く。あなたが彼の母国語で話したら、それは彼の心に行く。」という言葉を度々引用されています。実際にこの名言を実感したことはありますか

こんなことを言っていいのか分かりませんが、中国に来ると、基本的にお金を使わないです。中国語を話すことでみんなもてなしてくれるので、ほとんどお金は要らないです。また、フランスに行った時は、フランス語で飛行機のチェックインをしたら、勝手にアップグレードしてくれました。「君は席を勝手に選んでいいよ。ここの方が良いでしょう?ここにしてあげるよ。」と言って。フランスは特に自分の国の言葉にプライドがあるので、すごく得してますね。フランス語で話すだけでめちゃくちゃ変わります。

色々な言語を話したいと思ったきっかけも、それに結びついています。三週間くらいアメリカに行ったことがあったんですけど、その時にメキシコ人がいっぱいいて、その人たちに小手先のスペイン語で話しかけた時の印象が全然違って。そこからすごく良いものを得られたので、「相手の母国語で話すのはこんなに大事なんだ」と思いましたね。

アメリカのメキシコ国境近くで、メキシコ人の友人たちと

ーー色々な言語を話せると得をするということですか。

はい。ただ、喋れなくても生きていけますし、なくてももいいものと言えばなくてもいいものなので、何のために勉強しているのかというのがないと、挫折してしまうと思います。日本では外国語を話せなくても生きていけるので。大変だなと思ったらみんな挫折しちゃうじゃないですか。本当に、なんで勉強したいのか、というのは明確に持っておいたほうがいいなと思います。

ーー秋山さんは以前動画の中で、「唯一無二の存在になりたい」とおっしゃっていました。特に若い人たちは、生活や仕事に少なからず悩みを抱えていると思いますが、どうやったら自分の強みを見つけたり、伸ばしたりできると思いますか?

まず、そういった悩みの全ての原因は、自分の人生のゴールが分からないからだと思うんですよ。多分、大企業とかに入って、ずっとその会社で働いて、他に何もしなくて、副業もできなくて、という人が多いと思います。でも、例えばその人のゴールが「幸せな家庭を築くこと」の場合、別に会社や経済が安定していれば、それでいいわけです。だから一番大事なのは、自分の人生がどうなればゴールで、どうなればこの人生を成功したと言えるかということを、まず明確に見つけるということです。そのためには、自分がどういう人間かということを自己分析するのがすごく大事です。自己分析と言うと難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと、何をしたときに嬉しいかということです。

僕の場合は、他の人に「すごい」と思われたときが一番嬉しいです。承認欲求で作られた人間なんですよ。だから、「一人でも多くの人に『すごい』と思わたい」と思った時に、これは普通に会社でやっているだけだと、大きなプロジェクトのうちの一人になるので、「こいつがすごい」と思われることは、まあありえない。だから、自分で何かを始めなきゃいけない。自分にしかないものを持たないといけない。ということで、「唯一無二の存在」という言葉に行き着きました。だから、自分のモチベーションの源泉は何なのか、ということを知っておく必要がありますね。

例えば、就活の面接で色んな人が「他の人の役に立つのが嬉しい」とか、「ボランティアをしている時が一番幸せ」とか言っているけど、本当なのかな?と思うんですよ。そこで嘘を付いて会社に入っちゃったら、ずっとそれをやらされるわけです。「お前、好きって言ったじゃん」と。それをずっとそのままいってしまって、人生のジレンマに陥るんだと思います。大学生とか、若いうちに「承認欲求の塊」って言うのは嫌かもしれないですけど、本当にそういう人間なんだったらそこに素直にならないと、その問題って解決しないんじゃないかなと思います。立ち止まって人生を振り返ってみて、どんなときに人生楽しかったかな?と考え直すだけで、答えが見えてきそうな気がしますね。

ーー秋山さんは東大卒で、こんなに色んな言葉を話せて、普通の人というか大多数の人から見たら、すごい人だと思います。秋山さんは、自分に自信がなかった時期はありますか?

東大に入ることは、確かにすごいことと言えばすごいことかもしれないですけど、別にそれで人生が成功したとは一切思っていません。受験勉強の能力と社会で成功する能力はまったく別物だと思っているので。だから自分がすごいと思ったことは特にはないです。ただ、戦略的に他の人と差別化できるものを作っていこうとしているから、他の人から見てすごいと思われやすいんですよね。それだけです。

東京大学卒業式にて

ーーご自分では「すごい」とは思っていないんですね。

はい。自分で作っていかないと、他の人に埋もれてしまって、唯一無二になるという目標が達成できなくなると思いました。そこで、多言語というところで必ず第一人者であるべきであると思ったので、今ここにいます。全然、すごくはないですよ。自分の目標は人に「すごい」と思われたいということだから、どうしたらすごいと思われるかということを考えた時に行き着いたのが、この言語学習というものだった、というだけです。

ーー秋山さん自身好きなことですしね。

そうですね。他の人がゲームをやったり、アニメを見ているのと同じ感覚なので。やりたい事と好きな事が重なるというのは、一番幸せな形ですね。

ーー「外国語を学ぶと、その言語を話す時、性格も多少変わる」という説がありますが、秋山さんの場合はいかがですか?日本語、中国語英語、そして他の言語を話す時で、性格は変わると感じますか

僕は言語ごとに性格が変わるというイメージはあまりないですね。ただ、そもそも自分の性格自体は多少変わったなと感じます。

ーーどんなふうに変わりましたか?

思ったことを全部言うようになった、というのが一番大きいですね。例えば、恋愛するとき、相手のことを最初から可愛いとか好きだと思っていたら、ずっと言い続けます。それで飽きられることもあるんですけど、いい意味でも悪い意味でも、だいぶ変わりました。「日本人っぽくない」と僕は色々なところですごく言われるんですけど、それは本当に思います。どの言語を話す時にどんな性格、というレベルではなく、人間が根本的に変わったなと感じます。ネタで言いますけど、多分僕とデートをしたら、相当「こいつは何だ?」ってなると思います(笑)思ったこと全部言っちゃうんで。隠さなくなりましたね。

HTスタッフ(中国人):私は日本人と話すとき、性格が変わります。本当に言いたいことを言えなくなります。

秋山さん:それは、日本語で話しているというよりも、日本人と話しているからということじゃないかなと思います。どの言語を使っているかどうかというよりも、日本人はそういう人種だから、そうしようって思うのかなという気もします。

ーー最後に、HelloTalkのユーザーのみなさんへ、一言お願いします。 

まず一つは、言語学習は嫌々やらされてるという状態では絶対に伸びないと思います。僕の場合は、言語学習は勉強とは思っていなくて、みなさんがアニメを見ている感覚でやっているので。言語学習を楽しんでやれるようになるということが、継続させるためのポイントだと思います。そのためには、何のためにやるのかという目的をしっかり持つことが大事です。

最近では、翻訳機が発達してきて、「機械でやればいいじゃん」と思われるんですけど、僕は違うかなと思ってまして。生身の人間が相手の母国語を喋るということで相手の心は動くと思いますし、相手の心が動かなければ、ビジネスにおいても、何においても成功しないかなと思っています。言語学習はそんなところが魅力であって、今後AIが発達していっても、変わらないかなと思います。みなさんにも是非、言語学習を楽しんでやっていただきたいです。

秋山さん、ありがとうございました!

秋山 燿平(あきやま・ようへい)

東京大学薬学部卒。海外在住経験なし、留学経験なしで独学で複数言語を習得したマルチリンガル。「さんまの東大方程式」(フジテレビ系)に「10ヶ国語を操る超マルチリンガル」として出演し、驚異の語学力が話題となる。また昨年10月より中国のネットで活動を開始し、1年間で3つのプラットフォーム(微博、ビリビリ、YouTube)の総フォロワーが40万人を突破。現在は東京大学大学院を中退し、中華圏におけるインフルエンサーとして活動する傍ら、自ら会社も立ち上げ、自分の言語学習法の普及に努めている。

『純ジャパの僕が10ヶ国語を話せた 世界一シンプルな外国語勉強法』
秋山燿平 ダイヤモンド社 1300円(税別)

TOEIC300点台の両親のもとで育ち、海外留学経験もない「純ジャパ」が、独学で10カ国語を習得できた世界一シンプルな外国語勉強法! 必ず使う「200単語、30表現」を覚え、ひたすら使う。たったこれだけで、英語、中国語、フランス語、韓国語など、ほとんどの外国語は3か月で日常会話レベルに到達できる!(ダイヤモンド社公式ホームページより)

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Interviewed and written by Kaoru Nakano